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国際関係学科50周年記念事業 多文化・国際関係学科設立記念シンポジウム「女性フィールドワーカーは語る」

2018.10.15

2018年9月23日(日)、国際関係学科50周年記念事業 多文化・国際関係学科設立記念シンポジウム「女性フィールドワーカーは語る」が開催されました。スピーカーとして津田塾大学ゆかりの女性研究者4人が登壇し、国際関係学科の三砂ちづる教授が司会を務めました。会場は、学生や高校生から卒業生、研究者、国際協力関係者など、多様な職業、幅広い年齢層の人びとで盛況でした。以下、発表とディスカッションの内容を報告します。

若森参さんは、2012年津田塾大学国際関係学科の卒業。現在、京都大学霊長類研究所研究員である。タイで、異なる種類のサルの「しっぽ」の長さの変異メカニズムやその役割などに関して研究を行っている。サルの写真や動画を交えて解説するとともに、どのような調査資機材を使いデータをとるのか、そしてフィールドワークを実施する地域の人たちとどのように接し交わっていくのか話をした。

松山章子さんは、1982年に津田塾大学国際関係学科を卒業。現在、多文化・国際協力学科設置準備室特任教授である。留学したフィリピンで、スラムのある家に居候生活をするという形でフィールドワークを始めた。水汲みを事例に、社会調査において人々の生活の文脈を理解することの重要性を強調した。後半はネパールでの医療人類学的研究を基に、コミュニティには多様なアクターがいて彼らの病の認識は必ずしも同じではないことや医療の多元性に関しても話をした。

木村真希子さんは、現在津田塾大学国際関係学科の准教授であり国際社会学が専門である。インド東北部におけるエスニック紛争を事例に、国際関係や歴史社会学的視点を持ちフィールドワークを行うことの複雑さと面白さを語った。フィールドワークで丁寧にインタビューを重ねることで、書籍や文献だけからはわからない事実の側面を知る研究の醍醐味について触れた。

中村香子さんは、現在東洋大学国際学部准教授である。津田塾大学英文科卒業後、ケニアでNGO職員として働いていた時、サンブル(マサイ系牧畜民)と出会った。彼らのビーズでできた装身具に魅かれ、そのデッサンをし、重さを測定するとともに、情報提供者に装身具の入手方法やそれを身に着けることの意味などを尋ねていく。その問いに対する彼らの語りから、フィールドワーク前には単なる「装飾品」であったビーズが、その人が何者であるかについての情報の束という「記憶装置」へ変貌したと語った。

講演後、フロアからの参加を得てディスカッションが行われた。海外で津田塾大学卒の女性が国際協力で活躍していることと大学での学びとの関係、「開発」において外部者である我々の立ち位置、研究で得られた知見と国際協力の実践活動への応用の可能性、女性研究者の出産・子育てなどライフイベントと仕事のバランスなどに関して意見交換を行った。 新設の多文化・国際協力学科では、学生全員がフィールドワークを行う。現場でじっくりと物事を観察し、人々の話に耳を傾け、研究事象の本質に迫るという津田塾大学の研究の系譜は、今後さらに多くの若者が挑戦し受け継いでいくであろう。

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