講演会・イベント
【報告】「国分寺とアフリカのローカル・フードシステム—生活のなかに農がある」 2025年3月2日(日)14:00-16:00 cocobunjiプラザリオンホール
津田塾大学小平キャンパスが位置する東京都小平市や、その隣の国分寺市には、たくさんの農産物直売所が点在し、都市にありながらも、農と食の距離が比較的近く感じられる地域です。多文化・国際協力学科では、こうしたユニークな地域の特徴を活かして、国分寺市内の2軒の農家にお世話になりながら、「フィールドワークの実践a」という実習科目を開講してきました。今回、これまでの実習の成果を地域の人たちと共有すること、そして、そこから新しい「何か」が生まれることを期待して、イベントを企画しました。
さらに、本学科の教員である丸山淳子と八塚春名は、長年アフリカでフィールドワークを実施してきましたが、アフリカでも、とくに農村部では食べ物を「つくる」という行為と「食べる」という行為は直結したものです。そこで今回のイベントでは、農と食の距離が近く、それらが循環するということが、わたしたちの生活をいかにおもしろくしてくれるのか考えてみようと、農地面積率が都内第3位である国分寺市と、アフリカ(農村、都市)のフードシステムに焦点を当てました。
当日は、NPO法人アフリック・アフリカの塩谷暁代さん(京都大学)と近藤史さん(弘前大学)と、多文化・国際協力学科の卒業生で、現在は京都大学大学院でアフリカ地域研究を学ぶ笠原望さんが登壇してくれました。笠原さんは、卒業論文では国分寺市内の市民農園でフィールドワークをされ、現在はザンビアの農村で、地域の人たちが営む在来農業の研究を進めています。「国分寺もザンビアも、どちらも自分たちが食べるためだからこそ、暮らしの中に自然に『農』がある」と話してくれました。
さらに、イベントの最後には、国分寺市で農と食を中心に地域づくり活動を幅広く展開されているNPO法人めぐるまち国分寺の奥田大介さんと南部良太さんからコメントをいただきました。おふたりからは、「国分寺とアフリカをつなげて考えてみる機会を、ぜひまた持ちましょう!」と、今後のご提案もいただきました。
会場には、予想を大幅に超える80人以上もの参加者が集まってくれました。津田塾の学生、教職員、国分寺の市民の方々、農業従事者、飲食店の方々、さらには東京以外の地域からも、さまざまな人たちが参加してくれました。みなさん最初は「国分寺とアフリカって、なにか結びつくの?」と半信半疑でしたが、終わってみたら全員が「つながった!」と感想を寄せてくれました。


参加者からいただいた感想を一部、紹介します。
・グローバルとローカルから農について考える視点が大変興味深く、そこに見えてくる共通項は、私たちが生きていく上で忘れてはならない大切なことだと感じました。グローバルだけでなくローカルな関わり=フィールドワークを大学側からアプローチされ実践することで、街の盛り上がりになるような気がして、素晴らしいと思いました!私は卒業生かつ地域で農に関わる仕事やボランティアをしているので、今回伺うことができて、大変勉強になりました。来られてよかったです!(津田塾大学の卒業生)
・多文化・国際協力学科は、海外でフィールドワークをしなければいけないのかと思っていたので、国分寺市の農家さんでフィールドワークをされたというのを聞き、目からウロコでした。ずっと農業には興味があり、今日は参加させてもらいました。いきなり農家になるのは難しいかもしれませんが、市民農園のように自分でできる範囲で農にも触れていきたいと思います。(津田塾大学の卒業生)
・国分寺は直売所があったり、畑があったり、豊かで選択肢豊富な場所だな~とワクワク思っていたけれど、それをアフリカと関連づけ、グローバルな視点で考えられたことは、これから食と農を考えつづける中で良い気づきとなった。もっと、つくること、食べること、ハイレベルに探究し、実践しつづけたい!(近隣地域からの参加者)
また今回のイベントでは、NPO法人めぐるまち国分寺からの提案により、国分寺産のゆずとアフリカ産カカオのチョコレートをつかったケーキ、ルワンダのコーヒー、国分寺産のほうじ茶を出していただきました。最後には、このおいしいお菓子とお茶をいただきながら、同じテーブルの人たちと意見交換をする時間ももつことができ、ほんとうに充実したイベントでした。ご協力いただいたみなさま、どうもありがとうございました。
プログラム
・趣旨説明「国分寺とアフリカで見つけるローカル・フードシステムのおもしろさ」 (津田塾大学:八塚春名)
・「学生とまなぶ国分寺の農と食—津田塾大学のフィールドワークの実践」(津田塾大学:八塚春名)
・「国分寺からザンビアへ—暮らしのなかの農」(京都大学:笠原望)
・「ウガンダの都市農業—食べる、つくる、捨てない営み」(京都大学:塩谷暁代)
・「タンザニアと青森で、つくると食べるの近さを味わう」(弘前大学:近藤史)
・ディスカッサント:奥田大介氏、南部良太氏(NPO法人めぐるまち国分寺)
・総合司会:丸山淳子(津田塾大学)
主催:津田塾大学学芸学部 多文化・国際協力学科
後援:NPO法人めぐるまち国分寺/NPO法人アフリック・アフリカ
文責:八塚春名(多文化・国際協力学科)