卒業生からのメッセージ
麻場美利亜(2018年度卒業)東京外国語大学大学院博士後期課程
                            
                        10月12日のホームカミングデーで学生のみなさんに津田塾での生活やキャリアパスについてお話する機会をいただいた時、講演の前日までお話する内容に悩みました。なぜなら、自分はこれまで講演されてきたような卒業生とは違った学生生活を送り、キャリアパスは少々変わったものだったからです。
みなさんに何を伝えられるか考えた時、私にできることは、自分の道を歩くためのススメのようなお話をすることだと思い至りました。ここでは、講演の内容を含めつつ、私からのメッセージをお伝えできればと思います。
私の塾生生活は、所属していた英語演劇サークルでの稽古の日々に埋め尽くされていました。サークルでは毎年行われる演劇大会に向けて100人近くのメンバーが舞台を一から作る活動をしており、私はそこに役者として所属していました。たった3年間の素人ながらではありますが、演技を通じて学んだことは、「私は誰かになれず、その誰かも私になることはできない」ということ。他人と自分を比較することの無意味さでした。
現在大学院で文化人類学の研究をしながら感じることは、演技作りのプロセスと研究・分析プロセスがとても似ているということです。役者は他人になりすますこと、文化人類学者は他人の生活を見ることが仕事だと思われるでしょう。活動そのものはその通りですが、深部は違います。
役者と文化人類学者の一番大切な仕事は、自分の心、自分の思考の流れと向き合うことです。結局は、全て自分の心の延長線上にあるのです。
しっくりいかない就活は失敗し、卒論に追い詰められていた大学4年の夏。どうしようもいかなくなった私が自分の心に立ち返った時、「開発の現場にいる文化人類学者になりたい」という気持ちがあることに気がつきました。この気持ちは今も私の道標となっています。
みなさんは、津田塾、東京、調査フィールドといった環境のおかげで、新しい風に触れる機会が多いと思います。その風を眺めて楽しむことも大切ですが、風に吹かれ、揉まれ、流される自分の心と頭の動きにも目を向けてみてください。もしかしたら、そこに自分の道や歩き方のヒントがあるかもしれません。
PROFILE
大学在学中はTESS(ドラマ)に所属し、サークル活動に明け暮れる。大学4年目に重い腰を上げて卒業論文執筆に取り掛かりはじめ、フィールド調査として東ティモールを訪問したところ、同国に魅了されてしまう。大学卒業後は東京外国語大学大学院に進学、現在は同大学院博士課程に所属して東ティモールの精霊崇拝について文化人類学的に研究している。2021年から2024年まで在東ティモール大使館専門調査員、2024年末から2025年7月まで駐日東ティモール大使館広報アシスタントとして勤務。
※多文化・国際協力コース(多文化・国際協力学科前身)卒業生

























































































































































